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じっと蛇と視線を合わせていると、蛇の口が僅かに開き細く長い舌が覗く。
そしてそれにより口端に光る物が目に入った。
赤く光るそれはとてもその生き物には似つかわしくなく、麻都はそれを見たことがあった。
ご飯を買うために行った街の中を歩いていた多くの女性や男性の耳たぶ、時には口や鼻に。
しかしその名前を麻都は知らなかった。
なんであれがあの子についているのかな・・・?
精霊には付いているのかもしれないとも思ったが、ルカには人間の時もシャチの時も見たことがない。
もしかしたらあれが蛇を捕らえる原因ではないだろうか。
とにかく予測でもこのことをアディンたちに伝えようと2人の姿を探すため蛇から視線を外した。
すると今までよりも大きな何かが凍る音。
見れば麻都とルカ2人を包むように氷がドーム状に凍りだしていた。
『アディン!!』
ルカの叫ぶように呼ぶ声に振り返ったアディンは最も自分に迫っていたものを叩っ切りルカたちの方へと走り出し、その勢いのまま氷へと突っ込んだ。
通常ならぶつかる筈だがその体は中へと何の障害もなく吸い込まれる。
その後アディンに続くように突っ込んでいった枝などはぶつかって砕けていった。
アディンが入ると透けていた氷は曇るように白くなっていき、外からは中の様子がわからなくなる。
軍服の男は憎々しげに舌打ちをして横目で蛇を見た。
「四方八方から攻撃してさっさと壊せ」
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