第2楽章 偽りの罪人は死を望む

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強く睨んでくるアディンに麻都の体は強張る。 「お前は俺らに恩があるんだ。それを返すまでは死ぬなんて許されねぇと思え。分かったか」 命令するかのように言い放つ。 麻都は拒否することも受け入れることも出来なかった。 どうすればいいのか分からないのだ。 その中にある麻都に生きて欲しいという優しい想いに気づいたが、それではあの2人の願いを叶えることができない。 こっちの世界に来る前にあった病気の症状がこちらではまったくみえないし、違う世界だからといって自分がこのまま生きていていいなんて麻都には考えられなかった。 俯く麻都の膝の上にある手に白く綺麗な手が重なる。 『どうか自分から死のうとなんてしないでください・・・・』 ルカの真っ直ぐでそして涙で潤んでる瞳に麻都はつい頷き、それにルカもアディンもほっとした表情を浮かべた。 「じゃああの精霊を止める方法考えるぞ。おそらくあの軍人はそこまで強くねぇから精霊さえ止めればこっちにも勝機があるはずだ」 アディンの言葉にルカが頷く。 『あの人たちは契約をしているようには見えませんでした。木の精の方も仕方なく聞いているといった感じでしたし・・・』 「やっぱそうか。しかしどうやって・・・・・あ?なんだ?」 考え込むアディンの袖の裾を掴んだ麻都。 (あ、の・・・・)
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