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『これですね・・・』
眉間に皺をよせながら呟くとそれの上から指先をなぞる様に動かした。
するとパキパキ、と音をたてながらそれは凍り蛇の口端から取れて地面へと落ちていった。
『・・・すまない、氷の者。迷惑をかけた』
それが取れて蛇の僅かに開いた口から発せられた声は、男性の掠れた声だった。
『いえ、どこか不調はありませんか?』
『大丈夫だ』
ルカと蛇のやりとりを横目で見ていたアディンは地面に尻餅をついて唖然とルカ達を見ている男にニヤリ、と笑って剣先を向けた。
「これでお前の力はなくなったぜ。まだやるか?」
「ぐっ・・・くそっ・・・・!退却だ!!」
屈辱で顔を赤くしながらも後ろに控えていた兵士達に叫び、早足にその場を去って行った。
「あんなのが上官にいやがるなんて本当にこの国腐ってんな・・・」
アディンは深いため息を吐くとルカ達の方へと近づいていき、それに気付いた蛇がルカの腕の中からするりと抜け出し地面へと降り立つ。
すると蛇の姿が揺らぎ、アディンと同じくらいの背丈の青年が現れた。
少し長めの深緑色の髪に琥珀色の鋭い目、通った鼻筋、薄い唇など整い過ぎるほどの顔立ちは氷の精であるルカよりも冷たい印象を与える。
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