第3楽章 因果の鍵の名は

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しばらくするとその方向の天幕の影から1人の男が現れた。 背が高く、がっしりとした恰幅の良い男。 「ん?お譲ちゃんここで何してる?」 男に話しかけられた麻都はビクッと身を震わせて立ち上がった。 すぐにその場から逃げたく、走って去りたかった。 だがまたもあの馬が気付かないうちに服を掴んでおり、動けない。 服を引っ張ってみたが外れず、途方に暮れる麻都。 するとまたも聞こえだした騒がしい足音にさらに怯え体を強張らせ、ほとんど傍から見えない顔を青くさせた。 ―――――今度こそ捕まってしまう。 突然強く引っ張られて体が傾く。 あの変わった毛色の馬が銜えたままだった服を強く引いたのだ。 そのまま後ろに倒れないようたたらを踏むが、それを後押しするよう気づかぬうちに傍まできていた他の馬達が鼻づらで正面から押してきてまたも天幕に押し込まれた。
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