第3楽章 因果の鍵の名は

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ペロリ 頬を生暖かい物が撫でた。 驚いて横を向くと藍色の瞳が麻都の顔を覗きこんできた。 あの始めて会った馬が麻都の横に座っていた。 麻都は体に入った力を抜いた。 甘えるように馬が麻都の首筋に顔を寄せてくるので、その顔に頭をのせるように首を傾ける。 そのまま首やたてがみを撫でながらまた空を見上げた。 あの後、たくさんの人間の目の前に立った麻都が喋れず文字を書くこともできないと知った彼らは一緒に旅をしながら文字を教えてくれた。 彼らは各地を旅しながら人々に芸や劇を見せてお金を稼いでいるホールディア劇団というそうだ。 もちろん突然得体のしれない者を受け入れられずはずもなく、風当たりは強かったが長い旅のうちに打ち解け、今では皆普通に接してくれる。
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