第3楽章 因果の鍵の名は

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どれだけ団員達に罵倒されても厭味を言われても、麻都は怒った様子も泣く様子を見せなかった。 逆に自分をけなした者が困っていれば手を貸したり、周りが少しでも楽になるよう自分から行動していった。 ――――相手にお礼を言ってもらえなくても。 そんな麻都に団員達は次第に暗く怪しい見た目など気にすることもなくなった。 ロギアやマノリアが空いた時間に教えた文字が書けるようになると、団員達は自然と麻都に悩みまで相談するようにまでなったのだ。 口をはさんだりすることができないから黙って聞いてくれ、一緒にその悩みの解決策を一生懸命考えてくれる。 そんな麻都を劇団の誰もが認めるようになっていた。 「皆とも溶け込めるようになってきたし、良かったわね」 満足そうに笑って言うマノリアだが、ロギアはあまり明るい顔をしていない。 「確かになじんできたが・・・まだ心の傷は癒えちゃいねぇ。今だに他人が触ろうとすれば怯えるだろ?」 元々スキンシップの好きなロギアはよく麻都の頭を撫でようと手を伸ばす。 しかし1か月経った今でも麻都は身を強張らせる。 マノリアや他の団員でもそうだ。 「笑ったり怒ったり表情を変えることもねぇ・・・麻都の過去を知らねぇ俺達がとやかく言うことはできねーが麻都には幸せになってもらいてーんだよ」
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