第3楽章 因果の鍵の名は

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「麻都どうした?」 「あら、もしかしてさっきの公演聞いてないから分からなかった?」 俯いた麻都に男性団員は気遣い、女性団員は勘違いをして先ほどの公演で行った内容を詳しく教えてくれた。 「今即位してるジオラルド陛下ってね、まだお若い方なの。なんで即位できたかっていうと・・・父親である前国王を殺したからなの」 今まで俯いていた麻都が顔をあげる。 それに満足したのか女性団員は得意げな顔をして後を続けた。 「前国王のセオリオ陛下ってひどい方でね、民のことまったく考えてくれなかったの。 税を高ーくあげて、払えなかったりしたら体罰を与えたり、抵抗する人を死刑までしたこともあったの。 そんな時陛下の息子であるジオラルド王子が立ち上がり、国王陛下と王妃様をお討ちになったの。 これでようやく平和な暮らしが出来るかと思ったら税は全然下がらないし、荒れた村や町もそのまんま。 上の方々はどうせ私達民のことなんかどうでもいいのよ」 最後は不機嫌な顔になった女性団員。 確かにここへ来るまで旅の途中立ち寄った村や町はどこも貧しい生活をしていた。 そんな暗く辛い顔をした人々をホールディア劇団は立ち寄る場所どこでも公演をし、明るい表情に変えていったのだ。 けっしてお金は取らずに。 「もっと民の声を聞いてくれる方が即位してくださるといいんだけどな・・・」 男性の団員も暗い表情で溜息を吐いた。
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