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だが門に辿りつく前に麻都に近づいてくる軽快な足音。
振り返ればあの藍色の馬がこちらに向かってきていた。
そして麻都の横まで来ればその長い首を下に下げた。
まるで背中に乗れ、といわんばかりに。
麻都は頭でどうやってその背に乗るか考える前に体が勝手に動き、足が軽く地を蹴って背にふわりと乗った。
そして振り落とされないよう馬の首に手を回ししがみ付く。
それを合図と取ったのか藍色の馬は走り出し、城門を潜り抜け帝都内を駆け出す。
帝都内の建物は高く、整備された通りから路地を入ればまるで両側を壁で挟まれたかのようになる。
おまけに狭いためどこか体をぶつけてしまいそうだ。
しかし馬はまったく速度を落とすことなく道を進んでいき、広い通りに出た。
そこでは人々が1つの建物を見上げる人だかりができていた。
人達の視線の先の屋根の上に立っている1人の少年。
それに向かって鋭いくちばしや爪で襲う何羽もの鳥達。
顔や体の至る所に傷を作っていながらも、攻撃をかわそうと必死に避ける覚えのある少年の横顔に麻都は心の中でその名前を強く叫んだ。
――――――スタルフ!!
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