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「いてっ!」
鋭い爪が頬を引っ掻いて赤い線を作る。
すでに体中いたるところに傷を作っているがやはり痛みには慣れない。
「くそっ・・・なんで襲うんだよ・・・!」
家の中から勝手に取ってきた箒を振りまわして追い払おうとするスタルフだったが、鋭く曲がったくちばしに強い鉤爪をもつ鷹(タカ)と呼ばれる鳥は軽々と避けてまた襲いかかってくる。
しかも鷹達よりも体格も翼も大型の一羽の鷲(ワシ)が時々長く大きい翼を羽ばたかせば強い風まで襲いかかってきた。
まだ思春期に入ったばかりほどのスタルフでもこの鷲はただの動物ではないことはすぐに分かった。
なんでおっさん達なんだ?
なんで俺なんだ?
俺達がなにをした?
もう今ではなくなってしまったスタルフとイリが暮らしていた村で、精霊はとても慈悲深く、人間を見守りながら時には助けてくれる存在だと教えられた。
慈悲深いの意味はよく理解出来なかったが、教えてもらった精霊がこんなことをするなどスタルフは考えたくなかった。
姿は見えないが存在するといわれる精霊に憧れ、会ってみたいという純粋な想いが砕けてしまいそうで。
理解したくない、けれど理解したいという相反したその気持ちが苦しく、スタルフは叫んだ。
「なんで精霊が俺達を襲うんだよぉ!」
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