満月だけが知っている

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 俺は夜空に目を向けたまま、少し冗談めかして言った。 「べつに退屈なんてしてないよ、ぼく。なんか太一と一緒にいると、すごく安心するっていうか、いてくれるだけで幸せっていうか」 「おいおい、それじゃ俺って翔平の保護者かよ」  俺は少し口を尖らせた。半分それでもいいかなあ――、って思いながら。こいつと一緒にいられるのなら、それでも悪くない。「それじゃ、保護者らしく聞いてやるよ。少し冷えてきたからさ、夜風が寒くないか」 「うん、大丈夫だよ、逆にちょっと身体が火照った感じがするくらいだもの。だけど少しヤバイかな。頭が妙にクラクラしてる、でも、なんかいい感じ」 「あんなに一気に飲むからだ、酔ったんだ」  缶ビールを一気に飲み干した翔平の姿を思い出す。白い喉が動いてる様子が頭の中に蘇ってくる。 「ああ、そっか。さっきのビールで酔っちゃったんだなあ、きっと。だけどさ、ビール勧めたのは太一なんだし、もう、責任とってよね」 「俺、責任とるような悪さしてないぞ」  翔平はくすくす笑った。 「あはは、太一ったら。なに考えてるんだろ」  妙にロレツが怪しくなってる。  どうやら翔平は笑い上戸ってやつらしい、そう俺は思った。でも湿っぽくなるよりは、ズッといい。 「もし寝ちゃったらさ、ちゃんと起こしてね。月が欠け始めたら――、って事だよ」 「ああ大丈夫、もちろん起こしてやるとも。それまで俺は星でも眺めて待ってるから」 「うん、よろしくね。あれ、急に眠くなってきた……、まぶたが重い、な……」  そう言ったきり、俺のほうを向いて――、横向きに小さく丸くなって、翔平は寝入ってしまった。折れてしまいそうな華奢で脆そうな肩の線に、なんだか保護欲をそそられる。翔平の軽い寝息が俺の耳をくすぐった。
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