第四章:LIVING THING OF CONTRADICTION

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しかし、だ。 少女は目の前に現れた盾を気にも留めない。 臆することなくそのまま腕を振り降ろし、俺の氷の盾を打ち抜く―― 「――ッ!?」 また、だ。 衝撃がない。振動がない。音がない。 彼女の腕は勢いを殺さぬまま、俺の盾へと直撃したはずなのに、まるでそよ風が触れたかのよう、何も起こらない、感じない。 「もーいっちょう、イッチョウ」 「――ッ」 続いて二発目の攻撃の構え。 が、しかし、今度は不意をつかれたわけではない。 かわした後、返り討ちにしてやろう。 氷の盾を投げ捨て、俺は少女が振り降ろした二度目の拳を危なげなく回避してみせる。 少女の拳は一番最初の時と同様、地面へと。 しかし、まただ。 今度も振動がない。何も起こらない。 ――それがどうした? 相手の能力が何なのかなど、考えている場合ではない。 今こそが好機――! 「サセナイよ」 「ち――!」 だが。 残る片割れ、あいつの能力は空間飛翔を可能としている。 あいつ自身は俺からかなり離れていると言うのに、奴の身体の一部――、その右腕が俺の邪魔をする! くそったれめ――、ちゃんとした連携が取れていやがる! 「チャンス、ちゃんす」 好機は転じて、危機へ。 少女の右腕が三度、振り上がる。 ヤバイ。かわし―― 「ニガサナイ」 宙に浮かぶ少年の右手が、俺の首元を掴んで―― 「【三装填同時解放(トリプル・バースト)】」 回避は出来ず。 少女の右拳が。 俺のボディを。 思い切りぶち抜いた。 「――ッ」 ――突き抜ける。 衝撃が腹から、脳天へ、手足へ、全てへ。 突き抜け、破裂し、爆発した。 「が――……」 俺の身体が再び宙へと舞う。 真っ直ぐに、ストレートに、真後ろへ、吹き飛んでいく。 俺の後ろに立っていた少年の『本体』すら飛び越え、そのまま更に数メートル以上――あるいは数十メートルか、最早判断がつかない――吹き飛び、ゴム毬のように地面を二度三度跳ねて制止した。 「――あ、が、ああ――あ、あ、く……!」 言葉が紡げない。紡ぐ余裕がない。 息が出来ない。苦しい、痛い、イタイ。 尋常じゃない。 尋常じゃない、パワーだった。 先程喰らったパンチよりも、更に強い。 「が――……く……」 駄目だ。 駄目だ、駄目だ、駄目だ。 今の一撃は。 ――致命的、すぎる。
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