第一章:WORLD OF LONELY GIRL

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コツン、コツン。 俺の靴が床を叩く音がやけに大きく聞こえる。 錯覚ではない。 それにはちゃんとした理由がある。 俺の周囲には、現在殆ど人気がない。 『絶対不可侵の果て』。そこに一歩近づく度、少しずつ周りの人の数が減っていく。 故に、良く響く。良く聞こえる。 他に音がないからこそ。 俺の足音が、良く聞こえるのだ。 「……」 ああ、そうして、俺は辿り着いてしまった。 周囲を見渡しても、もう人の姿は一人たりとも確認出来なくなっている。 目の前を塞ぐ、白き扉。 ただの扉に過ぎぬと言うのに、何なのかこの威圧感は。 「Mr.A……」 その扉を前に、俺は何とか声帯を震わせて、音を発した。 「いらっしゃいますか、Mr.A」 必死に、がくがくと崩れ落ちそうな両足を地に縛り付け。 「私はC番隊のミスティック・レイジ。僭越ながら、頼みがあってやって参りました」 俺は、声を発した。 「……」 返事は、ない。 それどころか、何の反応も見られない。 聞こえて、いないのか? 「……?」 俺は声が駄目ならばとノックを試みる。 トントンと、右手で扉を二度叩く。 「え……」 本来ならば、それに応じて、扉から『コンコン』と音が発せられる筈だった。 何も、鳴らない。 扉は一切の振動をせずに、無音のままそこにあった。 「馬鹿な」 これは、どういうことだ? 俺は何をトチ狂ったのか。 その手に握るは氷結の剣。 空気中の水分を凍らせて召喚するは、我が片手剣。 試してみたくなったのか。 疑惑が理性を越えたのか。 俺はただ衝動のままに、その剣を白き扉に突きつける。 「――……」 ピシリ。 割れる音。 「何だ……、これ」 砕け散ったのは俺の剣。 扉には何一つ、傷一つ、『異変一つ残せぬまま』、俺の剣だけが砕け、割れ果てた。 「く……ッ!」 最早自分が何をしでかしているか、そんなことすら考える余裕が消えていた。 ただ、未知の存在に俺の思考は混乱し、自らの行動を制御出来ず、暴走した。 「『下がれ』」 この扉に、『何か変化をもたらしたかった』。
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