第一章:WORLD OF LONELY GIRL

14/23
前へ
/172ページ
次へ
「全く……」 やれやれと言った様子で、隊長どのはその白い顎髭を、左手で二度撫でた。 そうして呆れた顔をして俺の方に向き直ると、幼子に諭すように口を開く。 「いいか、ミス。Mr.Aはこの組織のトップであり、ありとあらゆる方面の仕事を取りまとめている。そんな彼が一々下っぱの意見に耳を貸せるような状況を作れば、当然彼はてんてこ舞いだ。だからこそ、彼に直接謁見を出来る人間は限られている。話があるなら私を通せ。それが筋だろう」 ああ、隊長どのの言ったことは何もかもが正論だ。 俺がしていること、しようとしていること、それは何もかもが間違っている。 恐らく、組織のお偉い方100人に話を通せば、100人とも首を横に振るだろう。 彼らは彼らの一存で決める権限を持たないから。 だから例外は認めない。 枠から外れたものは、全て却下。 例外を認めることが出来るのは、枠から外れたものを許可出来るのは。 その枠を作っている人間のみ。 つまり、Mr.Aただ一人。 だからこそ、俺は彼に会わなければならない。 彼に訴えかけ、その心を揺さぶらなければならない。 枠から外れたものを許可してもらうには、その枠を修正する力を持つものに頼むしかないのだから。 「……引く気はなさそうだな」 俺はただ無言を持って、隊長どのに力強い視線を向ける。 「……取り合ってみよう。却下されても、知らないぞ」 そうして遂に俺の頑固さに折れたのか、諦めた口調で彼はそう漏らした。 「有り難うございます」 視線の強さは消さないまま、俺は隊長どのに礼を述べる。 「ふん。聞くだけだぞ。謁見を却下されたら、素直に諦めるんだな」
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5830人が本棚に入れています
本棚に追加