5830人が本棚に入れています
本棚に追加
馬鹿にしたかのよう、無邪気に戦いを楽しんでいるかのよう、ケラケラケラと双子は笑う。
――身体の一部を魔法の効力範囲内に転移させる能力、か?
あるいは――、いや、今の一撃ではそのくらいしか思いつかない。
「次はキミがイクカイ?」
「ウン、イク。ワタシがイク」
声の高いほう――、つまり女の方が今度は一歩前に出る。
そして次の瞬間、ひょいっと宙に浮かんでいた拳と腕が引かれると、そのまま消えてなくなり、代わりに双子の男の方の右腕が元通り復活した。
――転移したというよりは、まるであいつの右腕のある場所と、先ほどまで右腕が浮かんでいた場所が繋がっているかのような――、そんな感じの移動の仕方だ。
わからない……、一筋縄ではいきそうに無い。
「イキマス、イキマース」
「……ッ!」
と――、今は双子の男の方よりも、此方に向かってきている女の方の迎撃が先だ!
思い切り右腕を振り上げ、殴る体勢を作る双子の少女。
向かってくるスピードも、拳を振り上げるスピードも大したことは無い。
――余裕でかわせる!
「ターッ」
マヌケな掛け声。それと共に振り下ろされる拳。
それを難なくかわし、俺は彼女の背後を取る。
目標を失った彼女の拳はそのまま地面へと突き刺さった。
彼女の拳はめり込み、激しい打撃音が――
「え……」
聞こえない。
無音、無風、無振動。
何も起こらない。それどころか、彼女の殴った地面には傷一つ無い。
どういうことだ?彼女には全くパワーがないということなのか?
いや、それにしたって今のは――
「またユダンだ。ミスティック・レイジ」
「ユダンだ、油断ダ。ミスティック・レイジ」
「――ッ!」
しまった――、絶好の攻撃のチャンスだったにも関わらず、俺は一瞬動きを止めてしまっていた。
正面には既に戦闘の構えを取り直している少女。
背後には、此方に向かって駆け出している少年。
完全に挟み撃ちの状況だ。
まずい、一見ふざけているように見えて――、こいつらはしっかり連携が取れている!
最初のコメントを投稿しよう!