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まあ、とにもかくにも。
そんなセカイとセカイが繋がるようになった世の中。
当然だがそれを纏める組織が必要となる。
例えばセカイ同士の揉め事なんて起こった際には、誰がその中立の立場にたてる?
互いのセカイにある法律やルールでは齟齬が生じるだろうし、ましてやセカイは無数。
起こりうる問題の数は計り知れない。
つまるところ、それらをどうにかするのがS・A・Dだ。
他にも、別のセカイでは解決出来る事柄が、他のセカイでは解決出来ない――や、今まで起こるはずのなかったことが、セカイを繋いだことでそのセカイに発生した、等々。
S・A・Dは、そう言ったことも纏めて対応する組織となっている。
それにまだ、パラレルワールドに関しては研究仕切れていない部分も多々ある。
そう言った研究も、勿論S・A・Dが受け持っている。
まさに、セカイの為のセカイの組織、と言うわけだ。
――と、そんなわけで、余程大きな事件でなければ我々は動かないわけだが。
『突如、空から悪魔が降り落ちてきた』。
先程も述べたが、それを聞いた当初は半信半疑。
S・A・Dの人間ですら耳を疑う、前例のない事件。
さて、これからどうなることやら……。不安は募るばかりである。
「まあ、しかし、降ってきた悪魔自体は大した力を持っていなかったから良かった。現地のセカイの軍隊でもそれなりの対応は出来ていたようだからな」
「そうですね。知能も低いようでしたし」
「とりあえず私はMr.Aの元に報告に向かうとしよう。では、また何かあれば連絡をいれる」
「了解です。隊長どの」
そう言い残して隊長どの――、アストロはMr.A、つまり、S・A・Dのトップの元へ向かわんと席を立った。
S・A・D最奥の部屋にいると言う彼。
俺はその姿を画面越しに一度しか見たことがない。
各部門の重要ポストにいる人間しか、彼と直接対話する機会などない。
それくらい、雲の上の人なのだ。
「……さて」
俺はそれを見送ると、席に座ったまま、別のことに思考を巡らせる。
「どうしたもんかな……」
考えているのは、悪魔討伐の時に保護した、あの少女のことである。
帰る家もなさそうな様子だった上、あの緊急事態だ。
咄嗟にS・A・Dの本部まで連れてきてしまったが――、この先どうするか。
今は俺の自室で休息していることだろう。が、しかし。
「いつまでも部外者を保護していられないよな……」
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