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「オープン・ザ・ドアー。――Different dimension flight」
「――ッ!」
双子の少年の方――、またさっきと同じ呪文だ。
正面の少女の方の能力も気になるが、今はやはり背後、少年の方の攻撃に備えるべきだろう。
俺はそう判断を決めると、左手にも氷の剣を精製し、半身だけを彼の方へ向ける。
「――え……」
それはまるで、風景の中に身体が溶けていくように。
少年の身体は此方に走り寄りながら、顔の正面から順に、スゥと音も無くその姿を消した。
「――転移系魔法……!くそッ、どこだ!?」
落ち着け。タネはわかっていないが、どういう能力なのかは大体把握できている。
消えたのではない。どこかに瞬間移動をしただけだ。
「コッチだよ」
「コッチ、コッチ」
「――……ッ」
声は右方向から。
少女と少年。彼ら二人は並んで此方に向かって来ている。
少女のいる側に転移したか。だが、折角の挟み撃ちの機会を逃す意味は一体――
「――ッ!?」
その答えは直ぐにわかった。
後頭部に、鈍い衝撃。
ぼやける視界。その視界の中、写った少年の右腕は再び『無くなっている』。
俺の注意を逸らし、クリティカルヒットを狙うために――!
砕けそうになる足腰。俺は何とか踏ん張り、戦闘の体勢を整えようとするが――
「二発分ダネ」
「ウン、二発分、二発分」
今度は少女の方――、彼女の方の右拳が、ふらつき、上手く動けない俺の顔面を、正面から思い切りぶち抜いた。
――ズドォォォッ!!
「――ッ!?」
激しい衝撃。吹き飛ぶ身体。思わず意識が飛びそうになる。
鼻血を出し、弧を描いて宙を舞いながら、俺は薄れ行く意識の中、混乱していた。
――何なんだ、この馬鹿げたパワーは。
――さっきの、何の力も篭っていなかったパンチは何だったのか。
少年の方はいい。だが、少女の方の能力が全く見当も付かない――ッ!
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