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「ぐ――……くぅッ!」
このまま倒れては不味い。
相手の能力も把握できていないまま、無防備な姿を晒してしまうのは致命的すぎる。
俺は舌を噛み、何とか意識を覚醒させると、そのまま強引に空中で身体をよじり、両の足で地面に着地する。
ズザザザザと土埃を舞わせながら、身体が吹き飛ばされた勢いのまま、後方へと滑っていく。
俺は更に両手を地面に付け、両足で思い切り踏ん張ることでその勢いを殺し、制止した。
「――……ぺっ」
ドロリとした鉄の味がする赤い液体。
俺はそれを乱暴に吐き捨てると、焦点の定まりきらない視線を双子の方へ向けた。
「耐えたネ」
「耐えた、タエタ」
相変わらずケラケラケラと可笑しそうに笑う双子。
ふざけやがって……。俺一人殺すのくらい、楽勝だとでも言いたいか?
「――ッ!」
一瞬の静止は束の間。
俺の目の前30センチもないところから、急に現れ、伸びてくる『人間の腕』。
「――が……!」
思い切り首根っこをつかまれ、絞められる。
呼吸が出来る出来ない以前に、やばい。
このままでは喉を潰される。
「――……ッ!」
声にならない声をあげ、
俺は両手の氷剣を投げ捨てる。
そして、空いた右手を真っ直ぐに目の前の腕に向かって伸ばした。
――氷細工にしてくれる!
「――か、は……!」
しかし、危険を察知したのか、俺の右手が触れようかというその瞬間、素早く首から手が離され、そのままひゅっと向こうに引かれて、その存在を消した。
「クラエ、喰らっちゃえ」
「――ッ!」
代わりに――、今度は少女の方。
いつの間に接近していたのか、既に彼女の姿は目と鼻の先。
そして以前と同様、振り上げられている右腕。
「ち――ッ!」
かわす余裕はない。
俺は右手に氷の盾を精製すると、それで自らの正面を守った。
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