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「……」
観念したのだろうか。
漸く諦めてくれたのだろうか。
アルフレッドは俺の言葉を黙って聞いた後、ふっと静かにその目を伏せた。
頬が緩み、微かな笑顔が漏れる。
「参ったね」
そして、彼はそう口にした。
「レイくん、君は本当に強くなった。この僕が、全く敵わないほどに。いいよ、一度刃を向けた以上、敗者は素直に勝者に従おうじゃないか」
言いながら、彼はすとんとその場に腰を降ろす。
最早完全に戦意は無いのだろう。
その表情はいつもどおり、柔和なものへと戻っていた。
「いいんだな?」
「いいさ。僕は君と正義を競い、そして負けた。ならば、君の方が正しいと言うことなのだろう。万事は、君が言ったとおり、上手く進むはずさ。あの、レイジと言う少年によってね」
「――さて、餓鬼二人の喧嘩も終わったところだし、聞かせてもらうが」
――と、そこで先程まで我関せずと壁に身体を預けていたミリアが、待ってましたとばかりに口を開く。
「アルフレッド。部外者は二人、と言ったな?もう一人は、誰だ?」
目を細め、探るような口調でそう投げかけるミリア。
言われてみれば、そうだ。
例の少女以外に、この施設内で部外者を保護しているなんて話は聞いていない。
ましてや、そんな例外が幾つもあっていいわけが無い。
そもそも、この施設内は部外者ご法度なのだから。
「ああ――」
クスリと、アルフレッドは微笑を溢す。
そして顔を上げ、緩やかに天井を見上げると、静かな声でこう呟いた。
「直に、わかるよ」
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