第九章:END OF GRIEF

18/18
前へ
/172ページ
次へ
「……」 観念したのだろうか。 漸く諦めてくれたのだろうか。 アルフレッドは俺の言葉を黙って聞いた後、ふっと静かにその目を伏せた。 頬が緩み、微かな笑顔が漏れる。 「参ったね」 そして、彼はそう口にした。 「レイくん、君は本当に強くなった。この僕が、全く敵わないほどに。いいよ、一度刃を向けた以上、敗者は素直に勝者に従おうじゃないか」 言いながら、彼はすとんとその場に腰を降ろす。 最早完全に戦意は無いのだろう。 その表情はいつもどおり、柔和なものへと戻っていた。 「いいんだな?」 「いいさ。僕は君と正義を競い、そして負けた。ならば、君の方が正しいと言うことなのだろう。万事は、君が言ったとおり、上手く進むはずさ。あの、レイジと言う少年によってね」 「――さて、餓鬼二人の喧嘩も終わったところだし、聞かせてもらうが」 ――と、そこで先程まで我関せずと壁に身体を預けていたミリアが、待ってましたとばかりに口を開く。 「アルフレッド。部外者は二人、と言ったな?もう一人は、誰だ?」 目を細め、探るような口調でそう投げかけるミリア。 言われてみれば、そうだ。 例の少女以外に、この施設内で部外者を保護しているなんて話は聞いていない。 ましてや、そんな例外が幾つもあっていいわけが無い。 そもそも、この施設内は部外者ご法度なのだから。 「ああ――」 クスリと、アルフレッドは微笑を溢す。 そして顔を上げ、緩やかに天井を見上げると、静かな声でこう呟いた。 「直に、わかるよ」 ※

最初のコメントを投稿しよう!

5830人が本棚に入れています
本棚に追加