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「遊びに来られるのですか?」
突然掛けられた声に僅かだが肩を震わせ振り返る。
そこにはよく見知った人物が立っていた。
「……姉さん」
いつからそこに居たんだろう。手に持っている掃除機の騒音のせいで全く気付かなかった。
いや…多分この人はそこに居た時からそこに居たんだろう。経緯なんて関係なく…居たという結果だけが残っている、そんな感じだ。
「遊びに来られるのですか?」
最初と同じ問いかけをこちらに寄越す。
「………分かってるくせに」
明確な解答は出さず。掃除機の操作を再開させる。
「ええ…貴方の行動は分かりやすいですから」
背中を向けていて表情は伺えないが、イタズラな笑みが脳裏に浮かぶ。
全く…だったら聞かないでくれよ。
「……」
「………」
「…………」
「……………」
「………………」
「…………………」
沈黙…ではなく掃除機の吸気音だけが鳴り響く。背中越しに感じる存在感。姉さんは未だそこに立ってこちらを眺めている事が見なくても分かる。
…
……
………
…………
……………
当たり前と言うべきか、耐えきれなくなったのは僕の方だった。
掃除機のスイッチを切り、姉さん。と振り返りながら声を掛ける。
「何ですか?」
とおっとりとした表情と声色で返ってくる。
「いや……何ですか?って聞きたいのは僕の方なんだけど。何なの、さっきから」
「我が弟を眺めているのに理由がいるんですか?」
いるんですか?ってな。
そりゃいるのかと言われれば答えはNOだ。かと言って
「理由もなしに見られて気分のいいもんじゃないよ」
理由があったとしてもじっと観察されるのは気分が悪いだろうけど。
「そうですか。ごめんなさい。少し気になったので、つい」
それだけ言い残し去っていった。
「………………」
それを目だけで追い、見送る。2秒も経たない内に視界から姉さんは消えた。
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