第1章

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「……………ふぅ」 肺一杯に息を吸った後大きく吐き出し溜め息とする。 危なかった。心臓がまだ踊ってる。 別にいきなり声を掛けられたぐらいで心拍数を跳ね上げてしまう程ビビりじゃない。重要なのはいきなり声を掛けてきたのが姉さんだったという事だ。 「今日も…綺麗だったな」 そう…僕は実姉に恋心を抱いているのだ。いや、恋心よりもっと崇高な感情な気もするが、僕にはそれを言い表すだけの表現力がない。だから一番近いだろう恋心という言葉を使っている。 しかし、実際は恋心なのかもしれない。単に相手が実姉であるからそう感じるだけかもしれない。 取り敢えず心臓の高鳴りを治める事に専念した。このままでは高血圧で他界してしまいそうだ。 深呼吸を幾度も繰り返しやっと心臓は静けさを取り戻してくれた。 落ち着いた所でさっきの場面を回想してしまう僕は恐らくってより確実に愚か者だろう。自分で自分の首を絞めようとしている。 しかし、首が締まろうが抑止力が働く事はなかった。 3つ上の姉さん。 絵に描いたような美人であり、いつもおっとりとした雰囲気を纏い物静かでそれを崩した所を僕は見たことがない。 流れるような緑かかった黒髪に絹糸のように繊細な肌。 身長は他より頭半分ぐらい低い。 「あら…ついに追い抜かれてしまいましたね」 と微笑み少し残念そうに言われた日には失神しそうになった。 立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花。この句がこの人以上に似合う人は他には居まい。そんな姉さんだった。 「……………」 だが、僕は姉さんに惚れこそはしたが没頭はしなかった。しないように抑止力を掛けに掛けた。 だって相手は我が実姉。こんな感情あってはならない。 動力源の7割を注いで抑止力を働かせたといっても過言ではない。それ程までに姉さんは魅力的だったから。 しかし、抑止力の限界は当然やってくる。そんな時だった。 僕は1人の女の子から告白を受けた。 救いに船だった。卑劣とか卑猥とか……言いたければ言えば言い。でも実際にそうだったんだから仕方がない。兎に角気を紛らわす事が欲しかった。
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