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卵が一つありました。
手のひらに丁度のるくらいの卵は中まで透き通った、水晶のようにぴかぴかです。
光に反射すると青や紫や桃色に変化して美しい虹を地面に落とす宝石のようです。
そのとびっきりの卵はただ一つ、無防備に草原に転がっていました。
卵には、それを暖める母親も、同じ形をした兄弟もいません。
誰の目にも留まらぬ世にも美しい卵はひっそりと静まり返り、じっと石ころのように転がったまま何日も何年も時が経ちました。
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