忘年会

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「うん 一人で来たし子供がいるなんて 聞いてなかった」 心なしか 雅史の顔色は青ざめている。 「本当にその彼女…名前なんて言ったっけ?」 裕子が聞いた。 「マリ子…」 「そのマリ子の子供なの? 雅史はそそっかしいから 隣の席の赤ちゃんを 連れてきちゃったんじゃないの?」 裕子は怒ったように言った。 「俺も一瞬そう思った でも…」 「あれ?何これ…」 クーハンの赤ちゃんを見ていた真美が 何かを見つけた。 「どうした?」 広之が席を立ち 真美の横にきてクーハンを覗いた。 中には何か紙が入っている。 「なんかの書類?手紙?」 広之が四つ折りになった白い紙を広げた。 『この子は6月30日生まれ。 血液型はあなたと同じA型 名前はあなたから一字もらって 雅樹です。 あの時の… たった一度の夜でしたが この子を授かりました。 一人で育てるつもりでしたが わけあって育てることが難しくなって お願いです。 しばらく預かってください。      マリ子』 広之は声に出して読み上げた。
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