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定時に決まって走る電車の音を耳にして、部屋に一つだけある窓を開けるとそこには冬があった。
手で窓の枠を掴み、体を少しだけ乗り出す。暖房の効いた部屋に充満した気持ちの悪い空気が部屋から外へと流れ出る。
体を包み込む冷たい空気が心地いい。
私は膝を着き、窓枠の上に乗せた腕に顎を乗せてあるモノを待つ。
すこしすると唄が聞こえてきた。
それは、冬の乾燥した空気の中で暖かく、しかし部屋の内にはないものを含んでいた。
私の体を徐々に潤していくのが分かる。同時に見えない星を掴むような、虚しい気持ちが私を支配する。
その唄を私は『陽のあたる唄』と勝手に名付けた。
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