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「それで……今日も不良に絡まれたから遅刻と…?」
もう何度となく聞いてきた質問を、担任はオレに振ってくる。
「本当だって。ほら、証拠もあるんだぜ」
オレは制服のポケットから携帯を取り出し、データフォルダを開き、先程写した光景を担任に見せる。
「ほぅ……これはいつに増して凄いなぁ…。ざっと見て10人以上はいるな」
「だろ?この人数に一人で相手するのは流石に骨が折れたぜ」
「そうか。だが、遅刻は遅刻だな」
「あー……やっぱり?」
「当たり前だ。こればかりはオレでも擁護はできないからな」
「そこを何とか…何とかしてくれよ、正ちゃん」
「諦めろ。それに、お前ばかり贔屓はしてやれないからな。教師というのは生徒全員に対し、平等に接せねば」
はぁ……やっぱり遅刻を取り消してもらうのは無理だったか……。
ちなみに、この担任…実はオレとは幼なじみで、名前は清田正治(キヨタ セイジ)。
歳はまだ25歳と若いが、多くの生徒に信頼されており、『清く、正しく、誠実に』をモットーにしている教師だ。
『どこぞの政治家のスローガンだ』と、ツッコみたくなるような言葉だけどな。
だけど、この学校で唯一、オレのことを心配してくれている教師でもある。
それには大分、感謝している…。
正ちゃんがいなかったら、今頃オレは学校を辞めていただろうな。
あと、オレの体質や生まれのことを理解しているから、話をつけるに都合もいいしな。
「あぁ、それと鎌」
「ん?どうした?」
「そろそろ戻らないと次の授業が始まるぞ」
マジでっ!?
オレは携帯で現在の時間を確認する。
液晶ディスプレイには、『10:47』と表示されており、次の授業まで残りは3分ほどしか無かった。
だが、まだ急げば何とかなる時間だった。
「それじゃあ、正ちゃん!!オレもう行くから!!」
「おぉ。だが…廊下は走るなよ」
アホかっ!!そんなことしてたら間に合わないだろ!!
オレは正ちゃんの忠告を無視し、走って教室まで向かう。
後で何か言われそうだが、まぁ…覚悟しとくか。
とにかく、次の授業にも遅れるのは、何としても避けないとな…。
オレは教室まで続く道のりを、全速力で駆け抜けていった。
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