EP.1 始まりの時は唐突に

7/8
前へ
/8ページ
次へ
オレは起き上がると、すぐにその入ってきたやつの顔を確かめる。 昨日の上級生の顔はしっかりと覚えてある。 さて…誰が来たのやら……… 「オッス、鎌。やっぱりここにいたのか。探したんだぜ?」 「………何だ、お前か…」 上級生かと思ったが……どうやら、違ったようだ。 ちなみにこいつは桐生利也(キリュウ トシヤ)。 オレとは同じクラスで、数少ないオレの友人の一人である。 「いや、お前…誰だと思っていたんだよ…」 「昨日話した上級生。報復に来たのかと思った」 「あぁ…あれね。お前がフルボッコにしたっていう上級生な。……というか…報復という考えが真っ先にくるって異常だよな…」 …………それは言わないでくれ…。 オレだって、本当は普通の生活を過ごしたいのに、挑んでくるやつがいるから、こんな考えを持つようになってしまったんだ…。 「…で、探してたって言っていたが、オレに何か用でもあるのか?」 「あっ、そうそう、そうだった」 そう言うと、利也は慌てて自分のポケットの中を漁り始める。 そして出てきた物は、乱雑に丸められた紙だった。 「………何だ、これ?」 「今日の宿題のプリント。答え教えてくれないか?または写させてくれ」 丸められた紙を広げると、確かに今日提出する宿題のプリントだった。 しかも、一切手をつけていない、まっさらな状態のままである。 「………何で、やろうとした形跡が一つも無いんだ…?」 「いやぁ…解き方がよく分からなくて…」 「はぁ……今から教えたとしても間に合わなそうだな…。仕方ない…オレのを見せてやるから、急いで写せよ」 「サンキュー!!やっぱり、持つべきもの友だな」 そう言って、利也は急いで屋上から教室にへと戻っていった。 プリントの在処を教えていないというのに…。 ちなみに、補足説明だが…オレ達の通うこの神北高校は、県内でも五本の指に入る程の進学校であり、生徒の大半が成績優秀者である。 その中でも、利也は屈指の馬鹿である。 まぁ、あいつは推薦入学(空手での)だから、勉強が出来ないのは仕方ないことかもな。 さて、オレもそろそろ戻るか…。 利也に鞄の中荒らされたくないしな。 そしてオレも、屋上を後にして教室に戻っていった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加