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オレは起き上がると、すぐにその入ってきたやつの顔を確かめる。
昨日の上級生の顔はしっかりと覚えてある。
さて…誰が来たのやら………
「オッス、鎌。やっぱりここにいたのか。探したんだぜ?」
「………何だ、お前か…」
上級生かと思ったが……どうやら、違ったようだ。
ちなみにこいつは桐生利也(キリュウ トシヤ)。
オレとは同じクラスで、数少ないオレの友人の一人である。
「いや、お前…誰だと思っていたんだよ…」
「昨日話した上級生。報復に来たのかと思った」
「あぁ…あれね。お前がフルボッコにしたっていう上級生な。……というか…報復という考えが真っ先にくるって異常だよな…」
…………それは言わないでくれ…。
オレだって、本当は普通の生活を過ごしたいのに、挑んでくるやつがいるから、こんな考えを持つようになってしまったんだ…。
「…で、探してたって言っていたが、オレに何か用でもあるのか?」
「あっ、そうそう、そうだった」
そう言うと、利也は慌てて自分のポケットの中を漁り始める。
そして出てきた物は、乱雑に丸められた紙だった。
「………何だ、これ?」
「今日の宿題のプリント。答え教えてくれないか?または写させてくれ」
丸められた紙を広げると、確かに今日提出する宿題のプリントだった。
しかも、一切手をつけていない、まっさらな状態のままである。
「………何で、やろうとした形跡が一つも無いんだ…?」
「いやぁ…解き方がよく分からなくて…」
「はぁ……今から教えたとしても間に合わなそうだな…。仕方ない…オレのを見せてやるから、急いで写せよ」
「サンキュー!!やっぱり、持つべきもの友だな」
そう言って、利也は急いで屋上から教室にへと戻っていった。
プリントの在処を教えていないというのに…。
ちなみに、補足説明だが…オレ達の通うこの神北高校は、県内でも五本の指に入る程の進学校であり、生徒の大半が成績優秀者である。
その中でも、利也は屈指の馬鹿である。
まぁ、あいつは推薦入学(空手での)だから、勉強が出来ないのは仕方ないことかもな。
さて、オレもそろそろ戻るか…。
利也に鞄の中荒らされたくないしな。
そしてオレも、屋上を後にして教室に戻っていった。
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