EP.1 始まりの時は唐突に

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オレが教室に戻ると予想した通りに、オレの鞄や机は利也の手によって荒らされていた。 周りには、宿題以外のプリントや、教科書等、オレの私物が散乱するという悲惨な状況となっている。 そしてその状況を作った当人、利也は何食わぬ顔で必死にプリントの答えを写していた。 今、こいつの頭にあるのは宿題のことしかないのだろう。 だから、平然とこんなことをしてしまった。 そうに違いない。 だから、ここは寛大な心で許してやろう。 こんなことで一々キレたりしていたら切りがないからな。 ………というか、さっきからクラスの連中が、オレと利也を交互に見ているが…これはどういうことなんだ…? こいつら、もしかして…オレの私物を散らかした利也を、オレが殴るとでも思ってるのか…? まったく…馬鹿馬鹿しい……。 オレがわざわざそんなことをするとでも思っているのか? ただでさえ友人の数が少ないというのに、それを減らす行為なんてするわけないだろうが!! ………とりあえず、散乱した私物を片付けるか。 教室の入口に立っていたオレは、机に向かって歩き出す。 それと同時に、教室内のざわめきがさらに増した。 だから、お前らが思っているようなことはしないっての。 机に近づくと、利也がオレが接近してきたことに気づく。 ちなみに、オレと利也は席が隣同士である。 だから、宿題を忘れた時には、いつもオレを頼ってくる。 こういったことは既に、日常茶飯事と化しているから、何も思うことは無かった。 「あと、どれぐらいなんだ?」 オレは私物を片づけながら、進行具合を利也に聞く。 「ぼちぼち」 利也は視線をプリントに映したまま、そう素っ気なく答えた。 言動と態度を見るからに、それほど進んでいるとは思えなかった。 「まっ、授業には間に合わせろよ」 ちょうど、片づけも終わったので、暇になったオレは今日出された宿題を進めることにした。 またこれも…こいつに見せる羽目になるんだろうな……。 そう思いながらも、オレは必死に宿題を写す利也の隣で、黙々と宿題を進めていった。
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