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午後5時半。
うっすらと夕焼けが空一面に広がる。
あたしたち2人を、スタッフたちは黙って眺めてた。
まだ撮影は終わってないのに。
監督はあたしたち2人のじゃれ合う姿をカメラに収めるよう、カメラマンに指示した。
拓真とあたしは砂浜に並んで腰を下ろし、砂のお城を造った。
貝殻で外壁を飾り付け、海水で固めた。
今までのあたしなら、絶対にしなかったなぁ。
女優だから?
そんなんじゃなく、汚れる自分が嫌だった。
爪の中に砂が入る。
衣装もベタベタ。
素足も砂と海水でドロドロ。
でもね、
それが嫌じゃなかったの。
拓真があたしを変えていく……。
傲慢で、天狗になったあたしの心を裸にしていくの。
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