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人の少ない通りを抜け、なるべく走らないように早歩きで進んだ。
2人して帽子を深くかぶり、サングラスをかけ、俯き加減で歩いた。
あたしは長い髪を帽子の中にまとめて入れておいたから、誰にも気付かれない自信があったわ。
でも、それでも、
あたしにではなく拓真に気付いたグループがいたのよ。
たちまち辺りは黄色い声に包まれたわ。
「キャア!あれ佐伯拓真じゃないっ?」
「えっ?」
「帽子かぶってるけどほらっ!似てるでしょ?」
「本当だぁ!」
「昨日までロケしてたみたいだしっ!」
「一緒にいるのは誰?」
「イヤぁ!拓真ぁ!!」
数名のギャルに気付かれたあたしと拓真は、駆け足になる。
拓真の、
「振り返るな!」
の声と同時に、あたしたちは走り出す。
あたしの手を、拓真が繋いだ。
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