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「とりあえず海に出よう。」
拓真はそう言って、周りにさっきの連中がいないかを確認した。
あたしは拓真のすぐ後ろをついて行った。
まだドキドキは止まらない。
さっき走ったからではない。
拓真がすぐ側にいるから……。
俯き歩くあたしの手を、拓真がそっと繋いだ。
「もう少し……、こうやっていてもいいっすかぁ?」
拓真が照れながら言う。
深くかぶり直した帽子で顔が見えないように、拓真は前を向いていた。
その時のあたしは、なんて可愛いんだろう。
「うん。」
あたしも帽子を深くかぶり直しながら頷いたの。
拓真の手のひらから伝わる温もりが、とても心地よくて、
あたしは素直になれたんだ。
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