-真琴-

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「樋口さぁん?起きてるんでしょっ?」 看護士があたしの布団を剥ぎ取った。 それでもあたしは体を丸め、目をガチガチに閉じて気付かないふりを続けた。 「樋口さんっ!」 入院して半年も経てば、あたしの日常は把握されてた。 看護士はあたしの寝たふりなんかお見通し。 「またタバコ吸ったでしょう!」 大してあたしと年の変わらない前田さんは、 強い口調で言った。 あたしはパッと目を開け、悪戯な笑顔を看護士に向けてやった。 「いくら窓を開けてもね、あなたからタバコの匂いが漂ってくるのよ! いい加減にしなさいっ!」 どうやらガウンや髪に、煙りが染み付くようであります。 にくったらしい『前田』というこの看護士めっ!今に見ておれぇ!!
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