序章

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  ザザザザザザザ……… 鬱蒼とした森の中に響く二つの音。 「はぁ、はぁ…くそ!まだ追ってきやがる!」 一つはこの男の、木々を掻き分け駆ける足音。 トットットットッ…… もう一つは俺の足元。木から木へ、枝を跳び移る音。 今俺は、眼下の男を追っている。何か罪を犯したとかで、指名手配されている。 どんな罪かは、正直知らん。 報酬額は1000G(ガルド)とそこそこの額だったな。因みに1Gで林檎2個買える。 え?100円?何それ、美味いの? それはさておき、生け捕りが条件だから、取り敢えずは走って疲れさせて、動けなくなった所を楽々捕獲っていう段取りだ。 俺はと言うと、飛翔魔法っつーのを使ってる。魔力で体を浮かせているだけだから、俺は疲れない。 ん?浮かせるだけだから、浮遊魔法か?まあ、どっちでも良いや。 「ぜぇ…ぜぇ……」 男の息が上がって来た。そろそろかな? 俺は先回りして魔法を解き、男の前に降り立つ。  ストッ む?良い音。決まったな。 「ぜぇ、ぜぇ、てめ、しつこい、だよ!」 うむ、程よく疲れているな。 では早速…。 『エア・ブラスト!』 と、思った矢先、男が掌をこちらに向けて魔法を放ってきやがった。名前からして風魔法か?しかし大したことないな。俺は手を翳してその風を受け止める。ついでに握り潰すと風が弾ける様に拡散した。 と、その弾みでフードで隠していた顔が露わになっちまった。 「くっ!このアマ!」 そう叫びながらさっきの魔法を放ってくるが、まてまて、俺は男だ!訂正を求める! 魔法を取り敢えず掻き消すと、男は驚いた様子でこちらを見ている。 「馬鹿な…魔法を消しただと!貴様…何者だ!」 ふむ、何者かと聞かれたならば答えねばなるまい。 俺は”白銀の旋風(かぜ)”セイル。覚えておけ三下。 因みに、さっきは魔法を消したのでは無く、同程度よりもちょっと強めの風を当てただけ。 『くそっ!くそっ!』 懲りずに連発してくる。ちょっと鬱陶しいなぁ…さっさと片付けるか。 俺は魔力を手に集める。すると銀に輝く光球が浮かぶ。銀は俺の魔力光の色。 光球に男の魔法が当たるが、弾け飛ぶ。 「何!?色付きだと!?貴様…オーバーSか!?」 また意味の解らない事を…取り敢えず、お前寝てろ。 ”シルヴァー・ウィンド” 俺は最も得意とする、二つ名にもなっている魔法を放った。
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