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『なんじゃい、うじうじしよってに。
男のくせして』
こんな僕を見て狐男は呆れたように言ってきた。
『ところで人の子よ。
お主、名前は何というんじゃ?』
「僕は……永良。
………君は?」
僕は別になんの考えも無しに自分の名前を口にし、狐男の名前まで逆に聞いた。
こんなにも他人に興味を示すのも珍しいな…と我ながら思った。
『ナガラか。
面白い名じゃの。
ワシの名か?
ワシに名なんてものそもそも持っとらんわ』
彼はケラケラ笑って答えた。
名前が無いの?
僕はてっきり妖怪だろうが人間だろうが名前は絶対あると思ってた。
「じゃあ……コン…」
『は?』
僕が言うと狐男は虚を突かれたように間の抜けた声を出した。
「名前がないと…呼びにくいから」
『…………。
プッ…アッハハハ。面白い人の子じゃ。
気に入ったぞナガラ』
暫く黙っていたコンが急に笑いだした。
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