序章

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円筒状の石積みの大きな檻で、外側は一部、象が出入りする場所を除いて井戸のように埋まっている。上から覗けるようになっていて、その檻の一箇所だけ象や飼育員のアーチ型の出入り口は鉄格子が嵌められていた。僕らはよくその中に入って草の生えた地面に寝転がりながら、丸い空を何時間も眺めて夢物語を語り合った。中学生になると、思春期らしく悩み事を相談したり将来の夢についても語り合ったりもした。  あの時も、そうだった。秋穂が渡米する一年前の夏――
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