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銀木犀
…彼女は背伸びして、その香りを確かめてた。
「ね、銀木犀って知ってる?」
…知らなかった。金、ならおなじみのアレだろう?。銀…があるの?。
「うん!金木犀より柔らかくて優しい香りなんだー。多分これは銀木犀!。」
…確かに、うっすらと記憶にある懐かしいような甘い香りよりは、確かに少し優しい。
「いい香りだねー。あたしはね、銀木犀の方が好きなんだ。」
…なんだなんだ。世間知らずみたいなカオして、俺より詳しい事もあるんだね。
「ヒドーい!!」
…僕達は歩いてた。太陽は一日のお勤めを終えようとしてて、気の早い冬がまだかまだかと待ち構えてるような日だった。
オレンジ色に染まった公園は、熱心なマラソンマンと犬の散歩と街路樹で賑わってた。
そんなふうに過ごして、僕達が一緒に夜を越えたのは二回あった。
キミは僕に触れたし、僕もキミに触れようとした。…でもね、重ねた唇の向こう側、でも本音の少し手前で
いつも、その香りがしてしまうんだ。
…苺の香りを纏ったキミの身体に、僕は確かに何度も誘われていたけれど。
僕は銀木犀みたいに
もっと違う、優しいカタチでキミを愛したいと思う。
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