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一時、抱きしめた後に男は抱きしめるのをやめた。
「――……ありがとう。頑張れる気がするよ」
男はそう言って女に向けて微笑えむと、桜の木がそれに釣られるように動いた。
「――……頑張れる気がするのではなく、頑張るのじゃ! そなたは必ずわらわに会いに来るのじゃからな!」
女は顔を背けながら恥ずかしそうにそう言うと、男はばつが悪そうに頭をかいた。
「……わかったよ。必ず――……絶対に会いにいくよ」
「……うむ。それでよいのじゃ。わらわはそなたを護る、ぞ」
女はそう言うと不意に、男に顔を近付けた。
そして――……、
唇が重なった――。
「んんんんんんっ――……?!」
男は一瞬たじろいたが、直ぐにその女の行為に従った。
「……っぷは。……こ、これでそなたはぜーったい! に帰らなければならなくなったのじゃ!
わ、わかっておるな?!」
女はもの凄く恥ずかしそうにに話すと、顔を両腕で隠した。
「え……う、うん。じゃあ、……行ってくるよ」
男はこれから向かうであろう戦場がある方向を遠目で見続けた。
「……じゃあ」
「……あ、……うぬ……」
男が戦場に向かおうと、歩を歩み始めた。
「……約束、じゃぞ……?」
女は声を震わせながら、つぶやいた。
「……うん」
桜は泣くように揺れ、男はそう言ってさらに歩を進めた―――。
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