最奥の桜

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 奈良県・中央部吉野郡吉野町  桜の名所として名高いこの町は、今活気に満ちていた。 時は今4月の中旬、ちょうど桜が開いているお花見の季節だった―――。  吉野山には約3万本もの桜があるといわれ、「一目千本」ともいわれる桜の木々たちは上からから下に、それぞれ      「奥千本」     「上千本」    「中千本」   「下千本」 と呼ばれている。  そんな桜を一目見ようと時期はうっすら寒いはずだが、むしろ暑い。  桜は満開の兆しを見せ、かわいらしい桃色の花を散らせ、また周りの観光客もそれに負けず劣らずの人数がいたからだ。  そんな中、同じ服を着た集団がゾロゾロと歩いてきた。  そう、それは正しく青春の証―――。  着れるのは長く、しかしあと少しで着なくなるとわかるともの凄く悲しいもの――。     学校の制服 「……う゛ー。さむ。なんで入学して1、2週間で校外活動なんだよ」  今ぐーたれた俺、名前は 倉岳 優冶 (くらたけ ゆうや) 今年、吉野ヶ丘高校に入学した……自分で言うのもなんだが、ピッチピチの高校1年生だぜ! 「……とは言ったものの、入学仕立てで話せる奴は……っといたいた。おーい! きよー!」  『きよ』と呼ばれて振り向いたのは小、中、高と腐れ縁の 百城 清彦 (ももしろ きよひこ)あだ名はまんま『きよ』!  きよはこの人込みの中、頑張って俺の所まで来てくれた。 「なんだよ、ゆう? 1人ぼっちが寂しいのか?」  冗談交じりで話すきよは見た目は二重で鼻も高く、……一言で言うとイケメン。 「違うって。ただ暇だったんだよ!」 「ほんとかよ?」  きよとたわいない談笑をしていると不意に大きな声が響いた。  
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