第1章ー出会い

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そして、俺はその二人の会話を知らないうちに聞き耳を立てて聞いていた。 2人の会話はたわいもないことばっかりだったが、俺にはそれすらも羨ましく思えた。 なんせ俺には友達が居ない。 小さいころから頑固な親父に教育され、母親の顔は見たこともない。兄弟もいるらしいが、逢ったこともない。俺は長男というだけで、親父に徹底的に教育されていた。一人さびしく来る日も来る日も会社経営のいろはを学んできた。 学校には通ってはいたが、ほとんど行ってはいなかった。学校で習うことよりも大切なことを教えてやるといって、大体が親父について回っていた。 そんなある日。ちょうど半年前くらいに親父か病気で倒れたんだ。 病状はよくない。いつ死んでもおかしくないとまで言われた。そう。癌だった。今まで厳しかった親父もだんだん弱くなっていくのがわかった。そんなときに母親の話、兄弟の話もしてくれた。そして、今まで自分の勝手な思い込みで俺に普通の暮らしを与えてくれなかったことを謝罪した。あの親父が。そしてそんな経緯があって、俺は黒龍学園に入学した。少しは普通の暮らしを経験するのもいいだろうと親父が言った。あの親父がだ。なので、俺は寮生活をすることになった。もう俺には帰る家がないから。
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