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「それに」
暫く黙って歩いていたが、ふと隣の少女が口を開いた。
「さっきは否定しましたけど、やっぱりわたしはこのためにリナさんたちと旅をしているのかもしれません」
初めて見る苦笑を浮かべ、俺を見上げる。その瞳は皮肉げにも見えた。
「セイルーンから出たことなかったとき、こんなに食卓というものに、表情があるなんて知りませんでしたから。リナさんたちと旅をしていると、見たこともないようなものを食べられて、面白いですしそれに、あんなに賑やかな食事の仕方もあるんだって、初めて知ったし、楽しいです。野宿も、外でお魚を釣ってその場で食べるのも、街を探して森の中を何日もさ迷うのも、みんな楽しいです」
言われて、毎度のリナとガウリイの食事風景を思い浮かべる。確かにあそこまでの見事な攻防戦、滅多に見れるもんじゃない。
「セイルーンの姫さんなら、食べたいもん食べれるんじゃないのか」
「‥興味ありませんでした」
微笑んで言って、また辺りに意識を向ける。その動作に、随分長いこと仕事を忘れ、会話に集中していたことに気付いた。俺も義理で辺りを見回すが、それよりも早く、アメリアが声を上げた。
「あっ、ゼルガディスさん、鍋ですよ、鍋」
視線でその店を示し、軽い足取りで近付く。
「もう冬なんですね」
「すっかり寒くなったしな」
二人並んで、飾られたサンプルから品定めをする。
「懐かしい‥わたしがまだ小さいころ、父さんと母さんと姉さんと食べました」
「魚介類か‥そういや海が近かったな。悪くない。リナや旦那に付き合ってると、鳥か豚ばかりだからな」
「みんなで一つの鍋を囲んで、他愛ない話をしながらつつくんです」
「にゃらにゃら‥高タンパク低カロリー、コラーゲンも豊富‥」
「みんなで食べたら、楽しいですよね」
「すっかり寒くなったしな‥」
「‥‥」
「‥‥」
「ゼルガディスさん(たち)と食べたいです‥」
「‥‥‥悪くない」
鶴の一声
レゾの思い付き
アメリアの「ダメですか?」
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