First Episode

3/55
前へ
/121ページ
次へ
「ねぇ、ここで何してるの?」 少女は俺に問い掛けた。 「……別に」 俺がぶっきらぼうに答えたのには、たいした理由があったわけではない。 ただ、俺のような劣生人類――何もされなかった人間――は、 優生人類に対して、やはりインフェリオリティコンプレックスを抱いている、からだ。 それに、夕暮れの、一人で過ごす時間、を邪魔されたくなかった。 けれども、彼女は執拗に話し掛けてきた。 「ねぇ、ここでなにしてるの?」 砂浜に一人で座って、俺はなにをしていたのだろう? ………ただ、自分の行く末の暗さを嘆いていただけだ。 「……別に」 俺はやはり、ぶっきらぼうに答えるしかなかった
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1477人が本棚に入れています
本棚に追加