First Episode

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「そろそろ、行くね」 「あぁ」 さようならを言う彼女を、俺は引きとめはしなかった。 俺のような存在に、彼女が声をかけてきたこと自体が稀有なことなのだ。 特に未練もなく、手を振る彼女に、俺も手を振った。 「ねぇ」 「………なんだよ」 「いつもここにいるの?」 彼女がどういうつもりで俺にそう聞いたのかはわからない。 けれども、答えなければならない気がして、俺は口を開いた。 「……あぁ、夕方はな」 少女は、ふぅん、と頷くと、のび過ぎたビルの影に消えていった。 俺はそちらに移していた視線を海に戻して、呟く。 「………ちょっと可愛かったな」
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