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少女は日の落ちた大通りを全力で疾走していた。
人目につくようにと大通りを狙った少女の判断は外れたようだ。
どうやらメイベルが先の追っ手の相手をしている内に何者かが人払いの『結界』をかけたのだろう。
未だに誰かが後ろから追ってくる気配はない。
恐らく一定の距離を保って少女の動向を見守っているのだろう。
「――最低ッ」
呟くように少女は吐き捨てた。
一樹からの連絡はない。
頼みの綱であるメイベルはどこにいるのやら。
一刻も早く白波 歩夢と合流しなくては彼の命が危ないというのに自分はただ走る事しかできない。
何て無力なんだ、と少女は歯がみした。
だが、全力で走り続けるのも、そろそろ限界である。
魔術という特異を抜けば少女はただの人にすぎない。
鍛えているわけでもなんでもない。
どうやら体力の限界は近いようだ。
少女は走るのを止め、その場でへたりこんだ。
息を整えて、また走ろうとした所で彼女は異変に気がついた。
「……止ってる?」
少女は呆然と立ち尽くしてた。
「こんなに早いなんて……嘘でしょ……お願い、無事でいて――」
――歩夢
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