序章

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あれは、そう保延三年の春?たったかしら。 と女は、聞き手の者に言ってから自分の父の出家の話を初めた。 まだ幼かった私はあの時も父が屋敷に帰ってくる気配を感じて、無邪気に父に向かって駆け寄って来る否や「お父様がお帰りになっていれしいわ。どうして遅くなったの。ご主人様の御許しが出なかったの」て、言ったのよ。 しかし其のいとしのお父様のお姿は墨染の僧衣を着て剃髪した。出家僧の姿だった。
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