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プロローグ
……崩れゆく城。
……崩れゆく心。
……朽ちるのをただ待つ体。
全てに身を委ねる事にした。
男の足が止まる。
「ワンワン」
と主人の身を案じる犬が吠えた。
「行けっ!ハンター!!」
男が叫ぶ。
「くぅぅ~」
ハンターと呼ばれた犬が萎む。
ハンターは賢い。
長年この主人に仕え片時も離れなかった。
故に主人の気持ちが理解できた。
男は“死にたい”のだ。
だからハンターは死なせたくないと目で訴える。
つぶらな瞳。
潤んだ眼差し。
それが男にとってはより一層痛い。
崩れゆく城。
砕ける心。
11人の仲間達は崩れ落ちる瓦礫に押し潰されまいと逃げる。
だが男は足を止める。
もう“俺の戦いは終わった”と。
「ワンワン」
とハンターがもう一度叫び駆ける。
ついて来い……そう言いたげに。
そして振り返る。
男は動かない。
遂にハンターは、男の視界から消えた。
後は一人朽ちる果てるだけ……。
もう男には何も残っていない。
相棒を見殺しにし、妻を看取らず、娘を捨てた。
罪悪に生きてきた男が唯一の歩めたのは修羅の道があったからこそ。
それも、もう終わった。
そうこの城こそが男の死に場所なのだ……。
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