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「最近浮上してきたのです」
ウエイトレスのレディが説明してくれた。
なるほど…浮上したのか。
私は胸中納得した。
あれから大陸や、そういった洞窟等が突如沈没したり、または浮上したりと変わった現象が起きるようになったからだ。
「その洞窟から来る魔物は狂暴化していると?」
「ええ」
レディが暗い面持ちで答える。
「おそらく……それらを束ねる魔物が、その洞窟の奥に潜んでいるな」
私はそう推測した。
「はい…この町の者もそう読んでます。ですから今、その魔物に懸賞金が懸けられているのです」
「わかりました」
私は残りのワインを一気に飲み干し立ち上がった。
「エイガーさん…まさか……!?」
「そのような魔物を野放しにするわけにはいきませんからね」
と言うと、お代をテーブルに置き、レディの脇を抜け酒場の出口に向かった。
「一人で行くなんて危険です。せめて……」
振り返りレディに向けて人差し指を立てる。
「ち、ち、ち……」
それを左右に降った。
「レディにそのような辛い顔をさせる輩は断じて許しませんよ」
「えっ!?」
レディが言葉を詰ませている内に、私は外に出た。
あのような暗い面持ちをしたレディを見てるのは、少々気が引ける。
レディはおそらく「せめて複数で行った方が良い」と言おうとしたのだろう……。
だが、魔物退治だけなら私一人で十分だ。
魔物など所詮ケフラカに狂化させられてたに過ぎない。
そう……ケフラカは自然の動物達を魔物に変えたのだ。
ケフラカが倒れた今でも、人を襲い続けている。
仲間がいたとはいえ、三聖霊やケフラカを退けた私にはそんな魔物など恐るるに足りない。
ちなみに三聖霊とは、このユグドラシルで精霊達を束ねる上位の精霊の事だ。
従って魔物退治“だけ”なら私一人で問題無い。
ただ気掛かりなのは……。
……………
「やっぱりこういうのがあったか」
私はおでこに手を当て、頭を抱えた。
私は、どっかのトレジャーハンターではないのだぞ……。
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