第二章 依頼

4/15
前へ
/73ページ
次へ
~アーク~ 俺は港町ニールに着くと真っ先に酒場に向かった。 この町は一年前と比べてほとんど変わっておらず、酒場の場所も同じだった。 とりあえず何をやるにも金だ。 まず仕事を探さなければならない。 酒場にはそういった話がある。 「何か金になる話はないか?」 マスターに声をかけた。 「それなら東に浮上した洞窟の魔物退治がある」 ん? ちょっと引っかかる言葉があった。 「……浮上?」 怪訝そうな顔をして口にする。 「あんた知らないのか?」 マスターはこの大陸の現状を説明してくれた。 「……わかった。で、いくらだ」 納得した俺は話を戻した。 「6000Gだ」 「準備金として先に1000G欲しい」 「ん?……それ持ってトンズラするんじゃないのか?」 訝しげに返すマスター。 俺をどっかのトレジャーハンターと一緒にするなと胸中ゴチってしまう。 仕方ないと思い、辺りを見渡す。 そして俺の視点は、ある物を捉えた。 “それ”は手に届く距離。 厨房に手を伸ばし、それを手に取る。 「お、おい」 マスターの顔が青冷めて一歩引く。 おそらく、これで脅されると勘違いしたのだろう……。 それも悪くないが、この大陸の今の情勢など、情報が少な過ぎる。 そんな状態で騒ぎを起こすのは得策ではない。 従って俺は“ソレ”を無造作に後方に投げた。 そう……放り投げるように……。 ブスッ!……ザクッ! 突き刺さる音が響く。 見なくてもわかる。 俺の無造作に投げたソレは後ろのテーブルに置かれた食べ掛けのペキンダッグに突き刺さり、そのままペキンダッグごと壁に突き刺さった。 俺が放ったその“ナイフ”は壁から落ちる事はない。 マスターや其処にいた客はそれを凝視している。 「ちっ!」 それをよそに俺は舌打ちを一つ。 “シュッ!”……ザクッ! って音を期待していたからだ。 ペキンダッグの残りの皮を切り裂き、そのままナイフだけが壁に突き刺さる事を……。 半年間の眠りに付き、目覚めてから半年間ぐーたらな生活をしていたのだ。 多少腕が落ちるのも致し方ない。 それでも俺は言葉を繋ぐ。 「次はその魔物がこうなる」 「……あんた凄いな」 マスターはまだ信じれないという面持ちで答える。 そして…… 「わかった……お前さんに賭けて見るよ」 と言って1000Gを渡してきた。 俺は、その金で武器など必要な物を揃え、東の洞窟に向った。 そして洞窟であいつと再会する事になった……。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加