第二章 依頼

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仕方無い。 戻って誰か手伝ってくれる人を探そう。 「は~」 私は溜め息一つ溢し、出口を目指す。 出口近くまで行くと、一人の男が此方に向かって来た。 「やぁ…君も魔物退治かい」 右手を挙げて軽い挨拶をすると男は、思わぬ言葉で返しきた。 「エイガー」 「ん?何故私の名を?」 「いや……フィックスの王だからな」 有名だからと言いたい様子だが、何かに動揺している感じがした。 言葉を発する彼はそっぽを向いている。 そして確かに私は一国の王だが顔が漏れているわけではない。 従って、私の顔を知る者は他国では少ない。 彼の挙動や言動は、何かやましい事があるかのように思えた。 「ははは……それは私も有名になったものだな」 社交事例じみた言葉で返し、直ぐに真顔に戻し、先程の質問繰り返す。 「それで、君も魔物退治で来たのかい?」 「……ああ」 「じゃあ一緒に行かないかい?」 「……それは俺を雇うとこうか?」 「はぁ?」 思わず溜め息にも似た言葉を溢してしまった。 「違うのなら俺は一人で行く」 男は私の脇をすり抜け奥へ進み出す。 「ちょっと待ってくれ……君がそう言うなら、それで構わない」 私が慌てて引き止めると、男は振り返った。 「2/3は俺の取り分な」 また訳のわからないことを…。 「いや…報酬は全て君に渡す」 そう元々私は報酬目的で此処に来たわけではない。 「…?」 男が訝しげな顔をする。 まぁ当然か。 「私はとあるレディに頼まれ来ただけだ」 「フッ……」 男が薄く笑う。 何処か懐かしいものを見る眼差しでだ。 この男は……やはり何処かで私と面識がある。 そう直感した。 「わかった……良いだろう。協力しよう」 男は了承してくれたので、私も軽く微笑んだ。 「感謝する……この先は私一人で越えられなくてね困っていたのだ。ところで君、名は?」 「………」 男が一瞬戸惑う。 「失敬……名を聞くなら、まず自分からだね……私は知っての通りエイガー、エイガー=フォックスだ」 気まずい空気を避ける為にあえて、知られている名を名乗った。 「……アークだ」 一呼吸置いて男も名乗る。 おそらく偽名だろう。 「アークか……宜しい頼む」 偽名とわかりながら自然に返す事にした。 「……ああ」 おそらくアークと名乗る彼は私を知っている。 しかし、本当に何かやましい事があるなら、一緒に行く事を拒むだろう……。 それに私も彼と会った事がある気はしてならなかった。
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