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私は謎の男、アークに協力を仰ぎ、再び奥を目指し、やがて私が越えられなかった場所へ到着した。
其処は深い崖ある。
トレジャーハンターのあの男なら、軽々降りられるだろうが、私には少々荷が重い。
「此所だ……此処から進めなくてね」
私がそう言うと、アークは薄く笑い、何の躊躇いなく歩み出た。
「お、おい……」
私が止めようとした、その刹那!
シュッ!
「えっ!?」
アークの姿が視界から消えた。
私は直ぐ様、崖まで行き下を覗き込んだ。
「なっ!?」
正直自分の目を疑った。
崖と言っても、真っ直ぐ下に続いているわけではない。
岩で出来ている。
つまり、凸凹してるわけだが、彼はそれを足場にして、軽々降りているのだ。
凸凹という事は、確かに足場になる飛び出た、言わゆる突起のようなモノがあるが、そんなものは10㎝にも満たない。
だというのに彼は、その10㎝にも満たない突起を足場にして、軽々降りているのだ。
それだけはない、彼は一切手を使わずに脚力だけで降りていた。
シュッ!…タンッ!
シュッ!…タンッ!
シュッ!…タンッ!
とリズム良く突起から突起へと飛び移るよるに降りている。
先程トレジャーハンターのあの男なら軽々降りられると言ったが、彼なら手を使いロッククライミングの要領で降りていくだろう。
でもアークは……。
このような芸当ができるのは、私が知る限り“一人”しかいない……。
しかし、私の知る彼は……。
と私がいろいろと思考を巡らせていると彼は最底に到着していた。
そして彼は懐をあさり、ナイフとロープを取り出す。
次にロープをナイフにくくり付け、ロープが付いたナイフを此方に投げて来た。
ブスッ!
ナイフは私の横にあった岩に突き刺さる。
アークはロープの先端をクイクイと引っ張り、ナイフが抜けない事を確かめると、
「……来い」
と一言私に発してきた。
「すまない」
と言って私はロープを津足り崖の下へと降りた。
私が降りきるのを確認するとアークは、もう一つナイフを取り出し上へ投げた。
そのナイフは、上で刺さっているナイフのロープを切り裂く。
そしてロープだけが落ちて来て、彼はそれを回収した。
見事過ぎる腕前だ。
私は彼の行動から目を離せなかった。
まずあの崖の降り方。
次にナイフを投げ、私の脇にあった岩に突き刺し、更にそれに付けたロープをピンポイントで切り裂く。
この投てきさばき…間違いないアークの正体は“彼”だ。
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