第二章 依頼

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私は謎の男、アークに協力を仰ぎ、再び奥を目指し、やがて私が越えられなかった場所へ到着した。 其処は深い崖ある。 トレジャーハンターのあの男なら、軽々降りられるだろうが、私には少々荷が重い。 「此所だ……此処から進めなくてね」 私がそう言うと、アークは薄く笑い、何の躊躇いなく歩み出た。 「お、おい……」 私が止めようとした、その刹那! シュッ! 「えっ!?」 アークの姿が視界から消えた。 私は直ぐ様、崖まで行き下を覗き込んだ。 「なっ!?」 正直自分の目を疑った。 崖と言っても、真っ直ぐ下に続いているわけではない。 岩で出来ている。 つまり、凸凹してるわけだが、彼はそれを足場にして、軽々降りているのだ。 凸凹という事は、確かに足場になる飛び出た、言わゆる突起のようなモノがあるが、そんなものは10㎝にも満たない。 だというのに彼は、その10㎝にも満たない突起を足場にして、軽々降りているのだ。 それだけはない、彼は一切手を使わずに脚力だけで降りていた。 シュッ!…タンッ! シュッ!…タンッ! シュッ!…タンッ! とリズム良く突起から突起へと飛び移るよるに降りている。 先程トレジャーハンターのあの男なら軽々降りられると言ったが、彼なら手を使いロッククライミングの要領で降りていくだろう。 でもアークは……。 このような芸当ができるのは、私が知る限り“一人”しかいない……。 しかし、私の知る彼は……。 と私がいろいろと思考を巡らせていると彼は最底に到着していた。 そして彼は懐をあさり、ナイフとロープを取り出す。 次にロープをナイフにくくり付け、ロープが付いたナイフを此方に投げて来た。 ブスッ! ナイフは私の横にあった岩に突き刺さる。 アークはロープの先端をクイクイと引っ張り、ナイフが抜けない事を確かめると、 「……来い」 と一言私に発してきた。 「すまない」 と言って私はロープを津足り崖の下へと降りた。 私が降りきるのを確認するとアークは、もう一つナイフを取り出し上へ投げた。 そのナイフは、上で刺さっているナイフのロープを切り裂く。 そしてロープだけが落ちて来て、彼はそれを回収した。 見事過ぎる腕前だ。 私は彼の行動から目を離せなかった。 まずあの崖の降り方。 次にナイフを投げ、私の脇にあった岩に突き刺し、更にそれに付けたロープをピンポイントで切り裂く。 この投てきさばき…間違いないアークの正体は“彼”だ。
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