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「ぅ……んん」
男がうなされている。
どんな夢を見ているのかしら?
というか、こんな大怪我して何があったのよ。
全く面倒ったらあらしない。
あたいは、この得体の知れない男を連れて帰ってきていた。
だって海辺で傷だらけで倒れていたら、ほっとけないじゃない。
仕方無くあたいのベッドに寝かせ治療をしてあげた。
でも、これって治療って言えるのかしら?
はたから見たら全身包帯グルグル巻きにしただけって感じ。
つまり、それだけ重症なのだ。
ミイラ男になるくらい……。
お陰でストックの包帯切れちゃったじゃない。
それにしてもこの男、何者なんだろう……。
スラッとした体つき。
だというのに、引き締まった筋肉。
無駄無くバランス良くついていた。
一体どういう鍛え方をしたんだか……。
そして気になるのは、左手の薬指。
指輪が光る。
誰か待っている人がいるんじゃない?
そう思った。
彼の所持品はこれだけ……。
顔は傷だらけでよくわからないが、髪は耳が隠れるくらいの長さ。
グレーという変わった色だ。
しかもそれは地毛である。
というか、こいつ自分で、髪を切っているな。
かなりバラついている。
まぁあたいも人の事は言えないが……。
「ふ~」
椅子に腰を掛け、一息付いた。
あれから六時間が経過。
日が沈みかけ、赤い光が窓から差し込む。
せっかくの洗濯日和だったのに、これじゃ干すどころか洗いに行けないじゃない。
胸中ゴチリながら自分の肩を叩いた。
長時間コイツの相手をしていたから、流石に疲れた。
とりあえずは一通りの治療は終わった。
となると次は買い出しだ。
包帯は切れたし、何より朝から何も口にしていない。
疲れきった体に鞭を入れ、立ち上がった。
あたいの家は、海辺近くにポツンとある。
町は北に一時間と離れた場所にあった。
外に出れば魔物に襲われる危険性があるので、好んで人里離れて暮らす者は少ない。
あたいは俗に言う変わり者なのだ。
北にある港町ニールに向かうあたいは、当然ながら魔物に襲われる事がある。
そんな時はどうするかって?
ふんふーん。
特製の秘薬をバラまくのさ。
どんな秘薬かって?
まぁそれはいずれ……。
……ともかく、魔物はその秘薬に飛び付き、あたいには危害を加えてこないわけだ。
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