第一章 覚醒

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「ぅ……んん」 男がうなされている。 どんな夢を見ているのかしら? というか、こんな大怪我して何があったのよ。 全く面倒ったらあらしない。 あたいは、この得体の知れない男を連れて帰ってきていた。 だって海辺で傷だらけで倒れていたら、ほっとけないじゃない。 仕方無くあたいのベッドに寝かせ治療をしてあげた。 でも、これって治療って言えるのかしら? はたから見たら全身包帯グルグル巻きにしただけって感じ。 つまり、それだけ重症なのだ。 ミイラ男になるくらい……。 お陰でストックの包帯切れちゃったじゃない。 それにしてもこの男、何者なんだろう……。 スラッとした体つき。 だというのに、引き締まった筋肉。 無駄無くバランス良くついていた。 一体どういう鍛え方をしたんだか……。 そして気になるのは、左手の薬指。 指輪が光る。 誰か待っている人がいるんじゃない? そう思った。 彼の所持品はこれだけ……。 顔は傷だらけでよくわからないが、髪は耳が隠れるくらいの長さ。 グレーという変わった色だ。 しかもそれは地毛である。 というか、こいつ自分で、髪を切っているな。 かなりバラついている。 まぁあたいも人の事は言えないが……。 「ふ~」 椅子に腰を掛け、一息付いた。 あれから六時間が経過。 日が沈みかけ、赤い光が窓から差し込む。 せっかくの洗濯日和だったのに、これじゃ干すどころか洗いに行けないじゃない。 胸中ゴチリながら自分の肩を叩いた。 長時間コイツの相手をしていたから、流石に疲れた。 とりあえずは一通りの治療は終わった。 となると次は買い出しだ。 包帯は切れたし、何より朝から何も口にしていない。 疲れきった体に鞭を入れ、立ち上がった。 あたいの家は、海辺近くにポツンとある。 町は北に一時間と離れた場所にあった。 外に出れば魔物に襲われる危険性があるので、好んで人里離れて暮らす者は少ない。 あたいは俗に言う変わり者なのだ。 北にある港町ニールに向かうあたいは、当然ながら魔物に襲われる事がある。 そんな時はどうするかって? ふんふーん。 特製の秘薬をバラまくのさ。 どんな秘薬かって? まぁそれはいずれ……。 ……ともかく、魔物はその秘薬に飛び付き、あたいには危害を加えてこないわけだ。
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