第一章 覚醒

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ふと覚醒した。 最初に思ったのは、何故あたいは床で寝ていたのだろう……。 フローリングの床は四月とは言え、まだ冷たい。 あまりにもの寒さで、目を覚ました。 こんな所で、寝ていては風邪をひく。 ベッドに向かおうと、そっちに視線を移した。 「………」 一瞬固まってしまった。 何故にカーテン? 其処で昨日の事を思い出した。 「は~」 思わず溜め息を溢してしまう。 仕方無いので、倉庫から客用の掛け布団を出してきた。 これじゃあ客用じゃないな……。 胸中苦笑し、再びフローリングで横になった。 流石に敷布団を持ってくる体力はない。 掛布団にくるまり、再び眠りについた。 それから一週間が経過。 男の傷は、まだ癒えない。 いい加減うんざりしてきた。 何故あたいがこんな事を……と思い、毎日のように男の体に治療薬を塗り包帯を替えた。 それも一ヶ月も立てば何とも思わなくなってきた。 それが当たり前の日課になっていたからだ。 独り暮らしなので、当然炊事洗濯は自分でこなし、それに加え男の包帯を替える。 多少傷は癒えたがまだまだ完治には至らない。 更に、彼はかない低い声で項垂れる事がある。 要はうなされているのだ。 その度に高熱を出す。 その時は、包帯を数時間起きに替え、濡れたタオルを頭に置く。 それが当たり前になっていたので、苦にはならなかった。 それどころか、独り暮らしという寂しさを埋めてくれるようなもの感じた。 ただ一つだけ気がかりがあったが……。 「ねぇ……あんた何者なんだい?……名前はなんてんだい?」 時々問い掛ける。 「………」 当然返事はない。 この時ばかりは、虚しさを感じずにはいられない。 一緒に生活しているのに会話がないのだ。 それがどうしても悲しくてならないのだ。 そして四ヶ月が過ぎた。 季節は八月。 猛暑だ。 ひたすら水をかぶりたいくらい暑い。 男の傷は、すっかり完治した。 だというのに意識は戻らない。 それでも、濡れたタオルで汗を拭き、服を替えた。 完治したので、もう包帯をはいらない。 代わりに服を買ってきていた。 いい加減に意識が戻ってくれないかと思う。 でもいつになっても彼の意識は覚醒しない。 もう二度と戻らないのではないのかとさえ感じていた……。
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