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待ちに待った日がきた……。
あれから半年が過ぎ、遂に男が目を覚ましたのだ。
「……ん……ぅ…ぅん」
「やっと目を覚ましたのね」
声を掛ける。
「ここは?……俺は一体……?」
かなり低くく渋い声だ。
「ここはあたいの家……貴方は近くの海岸に倒れてたのよ」
簡素に答える。
「……そうか」
男は虚空を眺めていた。
まるで、死にそびれたかと言わんばかりに……。
「半年も寝ていたのよ……もう起きないかと思った」
「そんなに寝ていたのか?」
男があたいを見つめる。
「そうよ……ところで貴方名前は?……あたいはナターシャ」
今初めて名乗るがあたいの名はナターシャ=プリズン。
「……俺には名などない」
「はっ?」
思わず間の抜けた声を上げる。
何?あたいは今まで名無し君を看病していたの?
それはあまりにも滑稽過ぎるよ。
なーんて、実は予想していた。
「名など当に捨てた」
男が言い直す。
だろうね。
全身傷だらけで、倒れていたんだもん。
得体が知れなさ過ぎる。
いろいろと訳ありだという事は察していた。
あたいは男を看病しながら、様々な事を想像していた。
目を覚ましても、記憶喪失なんではないかとか。
それどころか喋れないのではないかとか……。
「それだと何かと困るねぇ……じゃあ、あたいが名前つけて良い?」
寛大なあたいは、あえて何も聞かない。
それがお互いの為だろう。
ただ名前がないのは、不便である。
「……ああ」
ぶっきらぼうに答える。
おっ!なかなか素直じゃない。
「じゃあ海辺に倒れていたから……海辺…う~ん」
窓から外を眺め暫く考えた。
「海辺…水……う~んアクア…アクアアクア……アクー……アーク!」
そして閃いた。
「そうだ!アークなんてどう?」
「フッ……昔そんな名で呼ばれたこともあったな」
男の口元が緩む。
薄く笑った。
一瞬ドキッ!とした。
渋い声、笑みを見せた顔。
なかなか格好良いじゃないと思った。
「……どうした?」
男が不思議そうな顔で見つめてきた。
「ううん……じゃあアークで決まりね」
「……ああ」
そう答えると男は……今日からはアークだな。
アークは再び眠りに付いた……。
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